狂犬病とは
ヒトを含むすべての哺乳類に感染をするウイルス性疾患です
狂犬病を発症している動物との咬傷によってウイルスが侵入・感染します
感染成立後、狂犬病を発症していしまうと有効な治療法はなく、100%死亡する病気です
狂犬病ウイルスってこんなウイルス
ウイルスにもいろいろな形があり、狂犬病ウイルスの形はまさに弾丸です!
日本は昭和31年(1956年)以降に発生がありません
これは1950年に狂犬病予防法が制定されたことにより、狂犬病の国内撲滅が成功したことによります
どうやって感染するの?
日本では犬からヒトへの感染事例が多く、狂犬病予防法でも犬が予防接種の対象となっています
世界では、猫から感染したり、狐やコウモリから感染する事例もあります
また狂犬病は世界各地で発生しています
2017年のWHOの発表では、全世界で年間59,000人が亡くなっています
現在、世界の中で狂犬病がみられない清浄国は、日本を含む島国と北欧の一部のみで、
いかに世界中で蔓延している病気かわかると思います
狂犬病予防接種のポイント
狂犬病予防接種の対象
接種対象は生後91日以上の犬が対象です
生後91日以上の犬を飼育し始めたら30日以内に予防接種を受けさせ、お住いの自治体に登録が必要です
狂犬病予防接種の実施時期
予防接種は年度に1回受けさせる義務があります
2回目以降は、年度が変わったあと、4-6月に予防接種を受けさせ、自治体に届け出る必要があります
狂犬病予防接種が可能な場所
動物病院で接種可能です
自治体によっては、4-6月の間に集合注射を実施している場合がありますので、お住いの自治体にお問い合わせください
狂犬病予防接種の費用(千葉県)
初年度6,500円(注射費用 2,950円+新規登録料3,000円+注射済票550円)
初年度以降3,500円(注射費用2,950円+注射済票550円)
*注射費用はあくまで集合注射での費用です。動物病院で接種する場合は、各動物病院が個別に費用を設定しています。事前に動物病院にご相談いただくのが良いかと思います。
リンク(病院の料金ページ)
*当院で予防接種を行う際は、注射料金と診察代がかかります
*お住まいの自治体が、マイクロチップの狂犬病登録の特例制度に参加している場合は、新規登録料が不要となります
狂犬病集合注射とは
自治体が狂犬病予防接種を円滑に行うため、期間・会場を決めて自治体職員と獣医師が巡回しながら予防接種を行います
集合注射は4−6月の間に、自治体が管理する施設(公園や公民館など)で実施されることが一般的です
集合注射実施される場合、3月末に自治体からハガキまたは封書でお知らせが届きます
集合注射では、問診・視診を行い、接種の可否を診断しワクチン接種を行います
体調不良などのご相談は出来ないことが多いためご注意ください
多くの場合、次に当てはまる場合、集合注射会場で予防接種が出来ない事が多いためご注意ください
1,治療中の病気や疾患がある場合
→治療を行っている主治医で予防接種を受けることをおすすめします
2,犬が発情中や妊娠中
→ワクチンを接種しても免疫が獲得できない・胎児への影響を否定できないため接種ができません
3,2週間以内に人を咬んだことがある
→2週間以上の鑑定期間を設けることになっています
(その犬が狂犬病でないことを観察するため)
4,予防接種で具合が悪くなったことがある
→予防接種後に副反応が出ても集合注射会場で対応する事が困難なため
5,発作を起こしたことがある
→慎重投与が推奨されていますが、集合注射会場では詳細な診察が困難であるため
狂犬病予防接種の注意点
他の予防接種との間隔
狂犬病予防注射と他の予防接種の同時接種は推奨されていません
狂犬病予防接種の前に、混合ワクチンを接種している場合には、4週以上の間隔をあけてください
狂犬病予防接種の後に、他のワクチンを接種する場合には、1週間以上(できれば2週間)の間隔をあけてください
狂犬病予防接種の副反応
副反応は一般的なワクチン接種と同様です
注射部位が腫れたり、痛みが出たり、食欲が低下したり、元気がなくなったり
このような副作用は概ね、2−3日で改善されます
ごくまれに、注射直後に重篤な副作用(虚脱・呼吸困難など)がみらることがあります
これらの副作用は注射後15分以内に起こることが多いため、注射直後は特に注意をしてください
*狂犬病予防接種が他の注射よりも、重篤な副作用が出やすいという報告はありません
その他のアレルギー反応(顔が腫れる、じんましんなど)は注射後6時間位の間で発症することが多いため注射後はご注意ください
狂犬病ワクチンの種類
ワクチン自体は国が管理を行っています
動物病院でも集合注射でも、国家検定合格品を使用していますので、どこで接種してもほぼ同じものになります
狂犬病予防接種を受けさせなかったら・・・
狂犬病予防法では接種は飼い主の義務とされ、罰則が規定されています
法律の条文には、適切に予防接種を受けさせていない飼い主に対して20万円以下の罰金が明記されています
義務は注射だけではなく、注射をしたことがわかるように注射済票を首輪等に装着することも明記されています
人を咬んでしまったら
法律的には(狂犬病予防法第8条第1項)管轄の保健所へ届け出をしないといけません
届け出を行った後、獣医師による狂犬病鑑定が行われます
この狂犬病鑑定は、獣医師による「狂犬病ではない」事を証明する鑑定です
鑑定は2−3週間の間に複数回獣医師の診察を受け、鑑定書の交付を受けます
飼い主は、獣医師の狂犬病鑑定書を、届け出を出した保健所へ提出します
咬まれた人の処置についてWHOが基準を公開しています
出典:国立感染症研究所HP WHOポジションペーパーの更新
カテゴリー1(触れる・餌付けをする・健康な皮膚をなめられる)
創部の洗浄
カテゴリー2(保護されていない皮膚の甘噛み・出血のない小さな擦り傷)
創部の洗浄と迅速な狂犬病ワクチン接種
カテゴリー3(咬傷・擦過傷・損傷皮膚の唾液による汚染)
創部の洗浄、迅速な狂犬病ワクチン接種、必要に応じて免疫グロブリンの投与
咬まれた後にワクチン接種というのは、なんだか変な感じがしますよね
実は狂犬病は、感染が成立しても潜伏期(発症するまでの期間)が1〜3ヶ月と長く、その間にワクチンを接種し、免疫を獲得することで狂犬病の発症を阻止しようという治療法があるのです(暴露後免疫、暴露後ワクチン接種)
この暴露後ワクチン接種は、全世界で毎年1000万人以上が受けていると言われています
狂犬病予防接種率の実態
狂犬病に限らず、ある伝染病を流行しないようにするためには、その集団の免疫獲得・ワクチン接種率を70%以上が必要と言われています
ここ数年の日本国内のワクチン接種率は、おおよそ70%です
これは、自治体に登録している犬に対する、予防接種を行っている犬の割合です
これを国内の飼育頭数に変更していみると・・・50%に低下します
各個人・飼い主が、自分だけなら大丈夫と思っていると、全体的な接種率が低下して、狂犬病が海外から侵入したときに、流行を許してしまうかもしれません。。。
狂犬病予防接種は、犬の飼い主に課せられている大切なものです
その注射で、その犬の周りも、犬を飼育していない多くの人の命も守れるかもしれません
狂犬病予防接種は、忘れずにお願いいたします