コラムColumn
ワクチン接種

犬のワクチン抗体検査(当院の使い方)

抗体検査についてはこちら
コラム:抗体検査について

<注意>
抗体検査は完全な伝染病防御チェックの方法ではありません
あくまでも、伝染病の流行がかなり少ない地域であり、
 感染リスクとワクチン接種による副作用リスクが天秤で釣り合うような場合に検討されるものです
確実な伝染病予防を希望する場合は、抗体検査ではなくワクチン接種を検討ください
また、地域により伝染病の流行が異なります
かならず主治医にご相談の上、ワクチン接種または抗体検査をご利用ください

<本編はココから>

当院では次のような使い方をしています

1,ワクチン接種の代わり
ワクチン接種に抵抗がある、ワクチン後に調子が悪くなる等がある場合に、パルボ・ジステンパー・アデノのコアワクチンについてその抗体価を測定し、ワクチン接種の必要性を検討します

抗体が高ければワクチン接種を見送る
抗体が低ければ追加接種を検討する

という具合です

2,ワクチン接種の効果を判定する
混合ワクチンを接種しても必ず免疫が取れるわけではありません
一定数、免疫が低い、または取れていない場合があります
カッコイイ言い方をすると。。。。。
 ノンレスポンダー:ワクチン接種によって抗体を獲得できない個体
 ローレスポンダー:ワクチン接種によって期待される量の抗体を獲得できない個体
ワクチンを接種しても抗体が産生されないため、今後のワクチン接種計画を練り直さないといけません
その結果、ワクチンを接種しない、ということもあります
検査は、子犬(4ケ月齢)または1歳時の接種後に検査をすると効果的です

おおまかイメージではこんな感じです↓

実際のところ、抗体保有率ってどうなの?
2016年の国内の報告では、ワクチン接種3年後の抗体保有率を調べたものがあります
コアワクチン(とても大切で重要な伝染病)のパルボ・ジステンパー・アデノ(Ⅰ型/Ⅱ型)
  4種すべてに十分な抗体量を保有していたのは、全体の60%だったという報告です。
つまり、3年後には40%の個体でコアワクチン4種のうち、いずれかが足りなくなっている という事です

犬コアワクチン接種後の経過年数による抗体保有状況の推移

ちなみに、伝染病流行防止には集団としての免疫保有率が70%以上あることが必要と言われています

抗体保有率、、多いでしょうか?少ないでしょうか?
みなさんは、どう感じますか?

狂犬病ワクチンの抗体検査?
狂犬病ワクチンにも抗体検査が存在します
ただし、これは海外へ犬と一緒に渡航する場合の検査証明書であり、日常的に使用するものでありません
また、狂犬病を規定している「狂犬病予防法」では、接種以外を認めていません
(猶予は?。。。これはまた別の機会に。。。。)

<抗体検査と一口に言っても。。。。いろいろあります。>
IgM検査やIgG検査(Ig:Immunoglobulin:免疫グロブリン)
赤血球凝集抑制試験(HI:Hemagglutination Inhibition
中和抗体試験(NT:Neutralization test
他にも、蛍光抗体法、補体結合反応、酵素免疫測定法、受身赤血球凝集検査、ウェスタンブロット などなど
これらすべて、現在または過去の伝染病への感染状況を調べたり、ワクチン後の効果判定に用いる抗体検査です
各ワクチンメーカーがどの検査を推奨しているかをしっかり確認をして、ワクチン接種後の効果判定に有効な検査を行う必要があります

ヒトの抗体検査でも、疾患や目的によって推奨される検査方法が変わります

C・R・C検査会社より参照(http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/41.html

<当院での抗体検査の流れ>
院内検査キットもありますが、当院は大阪の検査会社(マルピー・ライフテック株式会社)に外注委託をしています
採血後、検体を郵送、メールで検査結果を受け取るため、7−10日ほどかかります
到着次第、飼い主さんと今後についてご相談しています