コラムColumn
日常ケア

イヌやネコの誤飲の対処法

ペットが食べ物以外を食べてしまったときの対処法(嘔吐させる・催吐処置)について。

食べてはダメなもの

・ネギ類(ニラやニンニクもダメです)
・チョコレート類(カカオ成分が高いものが危険です)
・ぶどうやレーズン類
・キシリトール
・果物の種やトウモロコシの芯
・不凍液(冷凍庫で凍らない保冷剤)
・観葉植物:多くの種類で中毒を起こすことがあります。
それらを一つずつ確認するのは難しいので、観葉植物全般が危ないと考えていたほうが良いと思います。
・タバコやお酒
・人の薬やサプリメント(人に無害でもペットに有毒なものがあります)
例)αリポ酸:猫に猛毒
・洗剤や防虫剤、駆除薬など
例)ナメクジ駆除剤などは美味しそうな匂いがするので誤飲が多く報告されています

食べ物ではないけれど誤飲が多いもの

・使い捨てマスク
・飼い主さんの靴下
・キッチンのふきん
・ハンカチ
・犬用のおもちゃ
・衣類の紐や髪留め、ヘアゴム
・ちゅ〜る(包装ごと食べてしまう)
・ウレタン製のマット(かじって遊んでいると、そのまま食べてしまうよう)

病院に行くときの注意点

食べた量や、大きさ、成分、レントゲンの写り方などが確認できるため、
バラバラになったものでも、できるだけ持参してください。
また、同じものがあれば、大きさの確認もできるためご持参いただければと思います。

病院での処置

食べたものが消化管を閉塞する可能性があったり、中毒を起こす可能性がある場合には、
薬を使って嘔吐を誘発させて吐かせることがあります。
ただし、摂取後時間が経っていると処置が間に合わないことがあります。

1,レントゲンで異物の確認

2,血管確保
薬を静脈内投与するので、薬剤がもれないように血管確保をします

3,薬剤投与
現在、動物病院で使用されている薬剤は「トラネキサム酸」が多いと思います。
このお薬は本来、止血剤として使用されます。
ですが、この薬を通常の5−10倍投与することで嘔吐を誘発させます。
お薬投与後、10分以内に嘔吐が生じます。

吐物内に目的のものがあれば、処置終了です。

4,嘔吐をしない、目的のものが回収できない場合
再度トラネキサム酸を投与したり、違う薬に切り替えたりします。

5,それでもだめな場合は、内視鏡や開腹手術に。。。。

<注意>
嘔吐をさせてはダメな場合(催吐禁忌)もあります!!
たとえば、洗剤や漂白剤などの誤飲の場合は、嘔吐をさせてはいけない場合もありますので注意が必要です

時間外や休診日だった場合は

時間外の場合は、まずは病院にご連絡頂き、催吐処置のみで対応できるか判断いたします。
麻酔(内視鏡・開腹手術)の可能性がある場合には、後日、または夜間救急病院の受診を
すすめる場合があります

処置後の注意点

トラネキサム酸で処置した場合に、帰宅後に他の副作用が出ることがありますので
当日から数日間、ペットの様子をよく観察してください。
いつもと違うことがあれば、病院までご相談ください。

処置後、お腹が空いてご飯をねだることもあります。
あらたな誤飲に注意しましょう
食べたものによっては、処置後に投薬が必要なこともありますので、
動物病院の指示にしたがってください。

自宅で出来ることは?

誤飲が疑われる場合は、できるだけすぐに病院に連絡をして対処法を相談してください。

ネット上には色々と対処法がのっていますが、あまりお勧めできません。

以下はあまりお勧めできません。。

1,オキシドールを飲ませる
薬局で入手しやすく嘔吐もさせやすいものですが、胃粘膜への刺激が強く、ひどい潰瘍を作ることもあります。
目的のものが回収できたとしても、オキシドールによる消化器症状を治療する必要が出てくるかも知れません。

2,食塩を飲ませる
各ご家庭にあり、入手に困ることはないでしょう。
ただし大量に飲ませる必要があり、嘔吐しない場合は、食塩中毒も対応する必要が出てきてしまいます。

意外に怖い催吐処置

日本獣医師会雑誌に、副作用の報告があります。
死亡例と痙攣症例です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/74/8/74_503/_article/-char/ja/

催吐処置を行って副作用を経験したことがあるか?という問いに
15%の獣医師が経験があると回答しています(162名中15名)
死亡例が4例(因果関係不明)
痙攣が9例(非死亡例の有害事象の60%)
そのほかでは、元気消失・食欲不振・嘔吐が継続するなどでした

私(院長)も、嘔吐以外の副作用も経験しています。
高齢犬で投与後に痙攣がありました。
幸い、抗けいれん薬の投与で事なきを得ましたが、大変怖い思いをしました。。。
また、他の子では、処置後から原因不明の食欲不振が続きました。
なにをどう検査しても、異常が見つからないんです。これは困りました。。。

ただ、有害事象(副作用)を経験されていない先生が85%いるので、比較的安全な処置であろうことは事実です。

トラネキサム酸の投与の他にも動物に嘔吐を誘発する方法はいくつかあります。。。
トラネキサム酸以外にも、嘔吐を誘発する薬物(アポモルヒネ)もありますが、悪心(気持ち悪い状態)が長く続いたり、元気まで無くなってしまったりと、嘔吐をしてスッキリとはいかないものが多い印象です。

犬の嘔吐処置で用いる薬剤の種類 グラフ
催吐処置アンケートを参照
日本獣医師会雑誌 2021 年 74 巻 8 号 p. 503-507

<注意>
上記の記事は、主にワンちゃんに対してです。
猫ちゃんの場合は、トラネキサム酸を試してみますが、あまり成功率が高くありません。
次の試すのは、メデトミジンという鎮静薬の筋肉内注射です。
吐いてくれる可能性が高いのですが、強い鎮静が掛かってしまうのが難点です。
今の所、猫ちゃんでは、うまい方法が見つけれていないのが現状です。。。

当たり前ですが、誤飲させないことが一番です。

なにか食べてしまった場合は、まずはご相談いただきたいのですが、
『薬の副作用を発現させて吐かせる』ということをご理解いただきたいと思います。